2010年度NHK放送コンテスト 作品紹介


ラジオドラマ部門

☆オーバードライブラビリンス

〜あらすじ〜
 少女・ユウナは優柔不断な女の子だった。重要な選択を迫られてはその度に妥協して決めてしまい後悔する。そんな自分に嫌気が差していたユウナはゲームに「選ばれし存在」としての自分を求める日々を送っていた。高校で自分はどの部活に入れば良いのか。自分が「選ばれし存在」となれる場所はあるのだろうか・・・。
 そんなある日、彼女はひょんなことからゲームの世界へ迷い込んでしまう。「魔王を倒し世界に平和を取り戻して欲しい・・・。」という声に応えるため、ユウナは勇者として立ち上がる。しかし彼女を待ち受けていたのは、現実と同じ、一度決定したら二度とやり直すことのできない「選択」の連続であった。
 「出来そうに無いから」「やっても意味無いから」という逃避の入り混じった選択の結果、最終的に彼女は窮地に追い込まれてしまう。「どうしてあの時やっておかなかったのだろう・・・。」自分が逃避と後悔を繰り返して、結局全く成長できていないことに気付くユウナ。
 「大切なのは過去を悔やむことではなく現在の選択なのだ」と、負の連鎖を抜け出したユウナの一撃は見事魔王を打ち破り、彼女は新たな気持ちを胸に現実へと帰るのであった。

―製作意図―

 「後悔」というものは人間であれば誰でもするものだと思います。「あれをやっておけば今頃は・・・。」などと後悔する反面、「これは難しそうだから止めておこう。」と現在できる選択で逃げてしまう。そんなにパラドックスに悩む人もきっと沢山いるでしょう。今の時代は高校生も大学進学や職業選択など自分の人生に関わる大きな選択をしなければならなくなりました。逃避と後悔の悪循環から抜け出すためには不安や逆境の中、勇気を持って飛び込まなければならない。そんな主題を伝えたくて、「選択」の多いRPGゲームを題材にこの作品を作りました。効果音やエフェクトを多用した明るいイメージで作品を作りましたが、私たちもこの主題について深く考えさせられる作品でした。


☆コトダマッチ (県大会出場)

〜あらすじ〜

 女子高校生の湊は周囲に気を遣いすぎて他人に本心を伝えるのが苦手。気の置けない友人にも言いたいことを言えずにいた。そんな中、湊は友人に「コトダマッチ」という携帯ゲームを紹介される。
 「コトダマッチ」は最近ブームの擬似ペット育成ゲームで、ペットは飼い主の言葉に反応して成長するというものである。ただし、反応するのは飼い主の「本音」。つまり本心から出た言葉のみ。友人のコトダマッチの成長をよそに、本心を言えない湊のコトダマッチは生まれてくる気配すらない。「コトダマッチ」の存在が、湊の「本心を言いたいけど、それで嫌われたくない」という葛藤を強くする。
 ある日のこと。湊が友人達と一緒に遊んでいると「コトダマッチ」から急にアラームが鳴り始める。それは湊の「コトダマッチ」のピンチを知らせるものだった。「このままでは、この子は卵のまま生まれて来れずに死んじゃう・・・!」。本心を言う勇気が出ない自分を強く責める湊。そんな中、友人達は湊に、自分達に本音を言うことを怖がらなくても良いと説得する。
 友人達がふざけながらも自分を心から心配してくれているという熱い思いに湊は本音で応える。そんな心からの一言は無事「コトダマッチ」にも届いたのであった。

―製作意図―

 人は、生きている以上世界中の誰かしらとは多かれ少なかれ関係を持っています。1人では生きていけません。そんな時に必要になってくるのが、他人の意見を聞く「協調性」。しかし、そればかり意識しすぎてしまうと、私達は自分の本当の気持ちを伝えるのを抑えてしまうことになります。高校という集団の中で、相手を思いやりながらも自分の本心と向き合い、言葉を伝える難しさに悩み、そして成長していく私達の等身大の姿を伝えたいと思いこの作品を作りました。企画当時は是非テレビ作品でやりたいと思っていたのですが、製作時間等の都合上ラジオになってしまったのが残念です。


テレビドラマ部門

★アリとキリギリス (県大会 優秀4席)

〜あらすじ〜

 成績優秀で周囲からの期待も厚い彩香は絵を描くのが好きだったが、美術への夢を捨てきれないながらも「将来のため」と勉学に励んでいた。ある日彩香が放課後に教室で勉強をしていると、写真部のみちるが教室の撮影にやって来る。彼女は写真で優秀な成績を収めており、写真家を志していた。好きなものを捨ててまで将来に向かって勉強している綾香は、自分とは対照的なみちるの選択に複雑な感情を覚える。
 数日後、コンテストで素晴らしい賞を取ったことが話題になり、一躍クラスで人気者となるみちる。そんな楽しげな様子をみた彩香は、葛藤に淀む感情を彼女にぶつける。みちるの生き方を否定する彩香。それから2人はお互いを避けるようになった。
 とある放課後、行き場の無い感情をぶつけるかのように屋上でスケッチブックに向かう綾香。そこにみちるが現れる。「私分だって不安だよ!」と自分の本心を彩香に打ち明けるみちる。それでも一般論に縋ろうとする彩香。そんな中、みちるはおもむろに綾香のスケッチブックを奪うと、ページを破いて屋上からばら撒いてしまった。
 みちるに掴み掛かる彩香。しかし、みちるの口から出た言葉は「それだけ絵に本気になれるんじゃん。」というものだった。みちるは綾香の絵への情熱を試したのだ。綾香に、中途半端なままじゃどっちを選んでも不安や後悔が付きまとうのだから、もっと真剣に向き合って決めるべきだと告げるみちる。最終的に進学を決める綾香だが、その眼にもう迷いは無かった。

―製作意図―

進路は高校生にとって最も大きな選択です。幼い頃に抱いた夢を追い続けるには世間は厳しいということを知ってしまったゆえに、夢と現実の間で迷い、苦しみ、どこかに不安を抱えながらも決断を下さなければならない。そんな中でやはり隣の芝生は青く見えるもので、他人の生き方を見ると表面の華やかさだけを見て自分の選択に対して卑屈にるということがあるでしょう。でもその他人もその人なりに悩んでその道を決め、努力を続けてきたからこそ今のその人があるわけで、決して誰にでも通用する素晴らしい生き方なんてものは存在する訳がない。だから人それぞれ違う考えを持つからこそ、自分自信が納得いくまで悩むのも大事だよということを伝えたくて作った作品です。
 タイトルの通り、この作品は童話「アリとキリギリス」をモチーフにして作っています。現代版リメイクといった感じでしょうか。録り方やBGMも工夫して、綺麗な作品の邪魔にならないように編集しました。


★電話にでんわ(全国大会出場)

〜あらすじ〜
 携帯に夢中で友人の話もロクに聞かない主人公・木村は、ある日罰として神様に携帯の姿に変えられてしまう。携帯の電池(木村の命)が切れてしまうまであと二時間。木村は友人の吉田に助けを求め、吉田は木村を助けるために奔走する。機械に詳しいメカ部の部長・高木にも助けを求めるが、彼女にも打つ手は無し。タイムリミットも迫り、元に戻ることを諦めた木村は学校の屋上で最期の時を過ごす。電源が落ちた後しばらくして、吉田は電話で高木からある事実を告げられる。
 場面は変わって学校の廊下。そこには何故か浮かれる木村の姿があった。実は携帯になったというのは、吉田の誕生日の為に用意したドッキリ企画だったのだ。高木から吉田は教室にいると聞き、吉田へドッキリのネタ晴らしに向かった木村だが、そこには吉田の姿はなく、代わりに彼の携帯が落ちていた。もちろんこれは高木から事情を聞いた吉田のドッキリ返しだったのだが、木村はあっさり引っかかる。タップリ楽しんだ吉田は、木村に自分の誕生日は昨日だったことを告げ、お仕置きを執行するのであった。皆もドッキリをする時は気をつけようね♪

―製作意図―
 4本中3本がシリアスムードな作品だったので、一本はアイデア満載の面白いものをということで作られました。元々は「逆擬人化」というのがテーマで、人が携帯電話になったら面白いよねという所から作品作りが始まりました。最初の頃は携帯電話の使いすぎはいけないよということもテーマに入っていたのですが、東北の段階から「純粋に見て面白いとある日の風景」という方向にシフトして、エフェクトや録り方などにこだわって作った作品です。


※あらすじ、製作意図は大会に提出した台本を基にして書いております。作品のインターネット上での公開は著作権等の関係上出来ませんが、個人的に見たいという風に連絡して下さった方がいた場合には検討いたします。

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